›10 23, 2004

平成8年2月分

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  1. ピューピューと あと追いながら 枝から枝へ 愛をたしかめ合う 春をまつ
  2. 坂道 ギューギュと音高く 二ヶ月先の春をまつ 音がする
  3. 湖の鉄橋に立って 風強く 顔はしばれ 体は飛ばされそう 我は七十才を感じる
  4. ガァーガァーと沢山のカラス 宿はどこにあるのかしら
  5. 逃げ惑う四羽のカラス 一羽のトビに追われて 小枝の中へ姿を消す
  6. 白湖面に赤い布を付けた竹棒 危険な場所 キツネの遊び場 子供達は遊びたがる
  7. 妻今日ハワイの旅より連絡あり 夕方帰ると 我白湖面に向かって 胸をおどらせ 大きく息をする
  8. 四組の大ガモ 雄ガモについて列を作り 氷の間をぬって行く むつまじさ
  9. かさなり合った氷 まえ まえと 押すけれど 新釧路川はまだ二月の川
  10. まだしも降りし雪の散歩みち 歩けども 歩けども 前に進まず 息だけが荒くなるのみ
  11. 雪の散歩みち 点々と歩く人あり 我も元気づけられ 歩きだす
  12. 坂の散歩みち 足をとられ 少しづつ丸くなる背中 春遠く
  13. 遠く聞こえる機関車の汽笛 今日は淋しい死と生の境
  14. 今は給食で幸せな児童達 六十年前はムギめしとイナギビめし 我は昔を偲ぶ
  15. 新雪の散歩みち 五十才くらいの主婦とすれちがう さかんに娘を呼ぶ影はなし 主婦に聞けば娘は痴呆との事 雪に座って雪をまるめている 我が娘の顔が浮かぶ
  16. 新雪の春採湖を横断せし 人の足跡あり 我はやせたし
  17. 又も降りし雪 杖のみの足跡だけが続く 散歩みち
  18. 選炭工場昔 今も屋根は青い 壁はクリーム色 工場の上に立って淋しく思ふ 夢はあと五十年
  19. 画筆をとる主婦は林ばかり描いている 気分転換に知人浜を教える 主婦は顔を見合わして喜ぶ 我も喜ぶ
  20. キリーン キリーンと 鳴く声は淋しく 公園は一面銀世界
  21. 一羽のカラス 今日も友なし ただ下を向いて うなだれている
  22. 白い散歩みち イガグリ頭の紺のジャージー姿 一列になって 去って行く 我も六十年前を思う
  23. 白い散歩みち 今日も友とすれ違う あいさつがわりに 冷たい風が ほほをさす
  24. 散歩みち二ヶ月あまり 合う人と あいさつする 友となりし
  25. 冷波をかぶりしてひろいし 老婆の昆布 だれが食べるかしら ばちがあたる
  26. 沖に停泊している船は何を積んでいるのか 沖を向いて 出航をまつ
  27. 銀世界 凧揚げをしている親子 ダルマ凧は上がりながら子供を にらみつけ 糸をもって逃げる子供の姿
  28. 老主婦 我が子より可愛いと 杖をだいて 歩く散歩みち
  29. 湖畔にある小学校の「のき天」塗料がはげし あれから五年 淋しく思う
  30. 風に乗って四羽のトビ 湖面の上で 上になったり下になったり 春を呼ぶ
  31. 林の中の散歩みち 主婦二人 雪と林の風景を 鼻をすすり手に息をかけながら 筆をとる まだ二月
  32. 雪湖面を走るスキーで 老夫婦行く 妻は夫に負けじと ストックをつく 我も少しでもあの幸せを もらいたい
  33. 今日合ふ地蔵と 自然と友となり 声をかける我
  34. 白い斜面に 黒い影も短くなり 太陽は中斜照りになり まぶしい光
  35. 湖の岡の家々に何事もなしや テレビは悲しいこと・血の出る事のニュース 我は雪湖面に向かって 問う
  36. ドナウ河の上にそびえる古城に似たりし博物館 春採湖を見守る
  37. 点々と散歩する人は 皆老人 明日の健康を信じ 安らぎを求めて
  38. 毎日すれちがう老夫婦 笑顔を浮かべて 手を振る 我は幸をいつまでもと祈る 後を振り向く
  39. 空は青し 風はなし ほほはしびれる 手はかじかむ 身はふるえる 春採湖の冬影は午後なり
  40. 歩くスキーの二人づれ 一日一日上達が見えるが 息切れると見えて 時々立ち止まる
  41. 赤い服で画筆を取る主婦一人 我は昔の少女を思う 散歩みち
  42. 一羽のカラス鳴きながら 頭上を飛び回る 今日は友もなく カラスの友となる
  43. 弁天浜 昔は昆布の取る浜 今は港も出来 漁を取る浜
  44. 杖で散歩する人 杖に引かれて散歩する人 共に平和な 散歩みち
  45. 雪も氷も解けし 散歩みち 春近し胸ふくらむ トビの声
  46. 夫婦で流れ昆布を ひろいし 食のため まだ知人浜は二月末
  47. 砂浜に立って カモメを見つめ 我一歩進めば カモメ三歩 後ずさりする
  48. 昆布を取る人頭より 冷波をかぶり 我は老婆の顔にかかりし 潮吹雪きをぬぐう姿に 頭が下がる